幼女の仔犬捜しと紳士

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日も暮れかかった頃。
田舎町の路上で、幼女が泣きながら愛犬の名を呼んでいる。
「茶々丸、お願い出てきえ、茶々丸ぅ……ひぐっ」
すっかり呼び疲れて、幼女は路傍にしゃがみ込んだ。
そこへ一人の紳士が通りかかった。
「そんな捜し方で、茶々丸が見つかるものか」
紳士は上着を脱ぐと、ワイシャツを腕まくりし、鉢巻を頭に巻き付けた。
「いいか、こうやるんだ!」
彼は地べたにお座りの格好をすると、空を高く仰いで深く息を吸い込んだ。
「ワォオオオオオン!」
その吠え声は、遠く彼方まで届いた。
しばらくすると、至る所から野犬の群れがぞろぞろと集まってきた。
いや、犬だけではない。
猫、雀、鳩、烏、鼠、亀、狸、馬、鶴まで来た。
幼女はその中に茶々丸を見つけた。
「茶々丸ぅ!」
涙の再会だった。
紳士は頷き、動物達と去っていく。
夕日に浮かぶその壮観なシルエットを幼女は胸に焼きつけた。
「おいたん、あひがとぅ…」
その他
公開:20/01/07 22:24
幼女 仔犬 例の紳士

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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