夢の法律

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 睡眠不足が社会問題となり、法律で一定時間は必ず眠るか、目を瞑ることを定めた。なるべく横になって目を瞑らせることで国民の睡眠負債を減らそうという計画だ。
 私はサービス残業三昧の会社で働いていて、まともに寝れていなかった。だか、昨日できたこの法律により、今日からぐっすり眠れる。
 今は夜十時。こんな時間に布団に入るのはいつぶりだろう。うとうとしながら私は、夢の世界へと一歩足を踏み出す。そこには咲き乱れる花々、頭をそっとなでる風、心身共に暖めてくれる太陽の日差し____。

「なあ、聞いたか?仮眠室の……」
「ああ。そいつ、いきなり、法律で決まったので寝ます、って訳のわからないことを言ったと思えば、それきり眠り続けてるんだろ?」
「しかも寝言もヤバイらしいぜ」

これで弟と同じ末路を辿らずにすむ。
睡眠不足で自殺した弟と____。

「そんな法律無いし、弟がいたこともないのにな」
その他
公開:20/01/06 12:00
更新:20/01/06 16:31

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