奉納舞

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 旅の途中の事だ。砂浜沿いを歩いていると、何やら人が集まっている。
 土左衛門かと思いきや、笛と鼓の音が聞こえて来る。
 そこで行われていたのは、人形神楽。
 幼児くらいの大きさの人形が、豪華な晴れ着に身を包み、海に向かって舞っている。
 海神様への奉納か。
 これは新年早々、良いものが見られたと思っていた時だ。

 突然、人形の首だけが無くなった。

 海から現れた何かが首だけをパクリと呑み込んで、そのまま海に消えたような気がしたが、あまりにも一瞬のことで波も立っていないので、ただの幻のようでもある。
 首が無くなると、集まっていた人達は、ありきたりな仕事終わりのように引き上げ始めた。

 聞けば、神楽の由来はわからないが、舞を奉納しなかった年は海が荒れ、必ず人が死ぬのだという。
 人形は、毎年首だけを挿げ替えている。
 晴れ着を変えなくていいのは楽だと、浜の老人は笑いながら語った。
 
その他
公開:20/01/06 10:22

堀真潮

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