赤いかき氷

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かき氷を食べている女がいた。
彼女は暑い、暑いとしきりに呟いてはかき氷を口に運んでいた。
ふわふわの雪に真っ赤な苺シロップをかけたようなそのかき氷に僕は釘づけになった。
唇はシロップのせいか、ぷるんと妖しく艶めいている。
かき氷を口に含む度にうっとりと目を細める姿はこの世のものと思えないほど美しい。
見ている間にかき氷を食べ終えた彼女は、喉を反らせて、器に残った赤い液体を飲み干した。
しかし、飲みきれなかった分が口の端から少し溢れ、白い首にまで伝っていった。
僕は思わず、あっと声を上げてしまった。
それに気づいた彼女がこちらを向いた。
涼しげな流し目が僕に突き刺さる。
心臓が大きく跳ね上がるのがわかった。
彼女は悠然と僕の前にやって来て微笑んだ。
僕は息を飲んだ。
音のしない世界の中で胸の鼓動だけが鳴り響いている。
これは、恋なのか?
きっと真冬の雪原の中じゃなければ、ハッキリわかるのに。
恋愛
公開:20/01/05 22:39

yori

読書が趣味なのですが、読むだけじゃなく自分でもお話を書いてみたくなり、筆をとりました_φ(・_・
ファンタジー系のお話が多くなると思います。
ゆくゆくはSF系にも挑戦したい。
主に土日に出没します⊂((・x・))⊃

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