三日坊主と召喚くじ(十四)

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まるで皆既日食を握ってる感覚。
A4コピーのお守りが震えながら渦を巻き、印刷の梵字が紙から浮いて丸まって、黒い太陽を創る。
「マドハンニマ・ラダボカマ」
俺の声だと気付くのに少し掛かった。黒い太陽が俺の中にもあって、その影を裏から透かしたみたいに。
「ノウシャロベイ・キャボア・オン・・・」
雪津波をぐるんと引っぺがして、黒く暗く昏く――――

――逆黒波。



波に呑まれたドラゴンが飴みたいに融解し、翅が乱気流の凧じみて、ベキバキ捩れながら本堂の瓦屋根へまとわり付いた。それより小さいのは、黒い光のせいで痕跡も追えなかった。
『おんあぼきゃべいろしゃのう、まかぼだらまにはんどま、じんばらはらばりたや、うん!!』
一海の声が、ちかちか薄く光りながら、すごく遠い。
晴人は、判らない。全部真っ黒で――どうしよう俺のせいで、

『大丈夫。落ち着いて』
闇狛――違う、誰――?

判らない。――眠い。
ファンタジー
公開:20/01/05 20:14

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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