やり残し年賀状

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「よぅ、久しぶり」
突然家にやってきたのは幼馴染だ。昔はよく遊んでいたが高校大学と違う道に進み、今では年賀状のやり取りしかしてない。その年賀状も数年前からは俺が送るだけだった。
そんな幼馴染がアポなしで俺を訪ねてきた。何の用だろう?
「用がなきゃ、来ちゃいけなかったか?」
そんな事はない。俺達は幼馴染。昔は連絡もなしによく遊んだ。それにお互いの連絡先も変わっているからアポなしになるのも当然だ。
「今日はちょっとやり残した事を済ませに来た。年賀状、返せなくてごめんな」
いいよ。気にしていない。そんな事を言う為に来たのか?
幼馴染は頷いた。律儀な奴、と笑ってしまった。他愛もない話で昔のように盛り上がった。

その日の夜。長い闘病生活の末、幼馴染が息を引き取ったと聞いた。
幼馴染は帰り際「俺の分まで元気でな」と言っていた。その意味が分かった。
幼馴染が出せなかった書きかけの年賀状が俺に渡された。
青春
公開:20/01/05 19:22

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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