風見先生の国語実践2

16
10

「というわけで、今日からここに住むことになった風見先生よ」
と、ママが言った。何が、というわけ、何だろう?
 先生はママに紹介されると、すっと立ち上がり、風呂桶に水を張ったかと思うと、今度は庭から土を持ってきてそれを放り込んだ。
 水が茶色く濁る。
 皆がじっと見つめていると、徐々に土が沈んでいく。何がしたいんだ?
「住むとは、水が澄む、つまり一つの場所に心が落ち着くという意味です」
 水はやがて透明になる。
「これが吾輩の今の心であります」
 先生は胸に手を当て、私達家族に感謝するように頭を下げた。
「さすが先生! これが国語実践ね!」
 ママとパパは拍手した。
「照れますぞ、ハハハ」
 先生は扇子を出して仰け反りながら笑うと、そのまま風呂桶の中に後ろ手を突いた。泥水がびしゃっと私の顔にかかる。
「おっと、これは、す(澄)みません!」
 風見先生、水がまた濁ってますよ、と私は思った。
青春
公開:20/01/05 18:26
風見先生 国語実践シリーズ 住むの語源は澄む

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容