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新年も10日を過ぎ、初詣の喧騒もおさまって、夕暮れの稲荷社はしんと静まりかえっていた。杜の中にひっそりと佇むこの神社の静けさが好きで、時折私はここに来る。
この稲荷社の参道には、古びた朱塗りの鳥居が何故か99基あり、それを数えながら歩くのが習わしだ。人の途絶えた社に合掌し、眷属の狐さまを撫でてから、ゆっくり参道を下る。
…97、98、99、100……100!?
そんな筈はない。上りは確かに99基だった…。その瞬間ゆらりと視界が歪み、頭の中で深い声が響いた。
『…汝、此度で100度目の来社也。月満ちる日にめでたき節目を迎えた寿ぎに、汝の望み、我が叶えるもの也…』
轟っと風が吼え、静寂が戻った。気がつくと東の空に狐色の月が上っている。
「…満月…」
ふらつく体で月と鳥居に頭を下げ、車に戻ると同時にスマホが光る。メール?
『最終選考通過のお知らせ』
私は雌叫びとともに、拳を空に突き上げた。
この稲荷社の参道には、古びた朱塗りの鳥居が何故か99基あり、それを数えながら歩くのが習わしだ。人の途絶えた社に合掌し、眷属の狐さまを撫でてから、ゆっくり参道を下る。
…97、98、99、100……100!?
そんな筈はない。上りは確かに99基だった…。その瞬間ゆらりと視界が歪み、頭の中で深い声が響いた。
『…汝、此度で100度目の来社也。月満ちる日にめでたき節目を迎えた寿ぎに、汝の望み、我が叶えるもの也…』
轟っと風が吼え、静寂が戻った。気がつくと東の空に狐色の月が上っている。
「…満月…」
ふらつく体で月と鳥居に頭を下げ、車に戻ると同時にスマホが光る。メール?
『最終選考通過のお知らせ』
私は雌叫びとともに、拳を空に突き上げた。
ファンタジー
公開:20/01/05 17:50
更新:20/01/05 18:01
更新:20/01/05 18:01
誠に残念ながら
この話はフィクションです
満月の夜と
逢魔が時の神社には注意
今月の満月は11日
2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません
【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)
【近況】
第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞
【note】
https://note.com/akishiba_note
【Twitter】
https://twitter.com/CNecozo
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