この子の100度のお祝いに

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新年も10日を過ぎ、初詣の喧騒もおさまって、夕暮れの稲荷社はしんと静まりかえっていた。杜の中にひっそりと佇むこの神社の静けさが好きで、時折私はここに来る。

この稲荷社の参道には、古びた朱塗りの鳥居が何故か99基あり、それを数えながら歩くのが習わしだ。人の途絶えた社に合掌し、眷属の狐さまを撫でてから、ゆっくり参道を下る。
…97、98、99、100……100!?
そんな筈はない。上りは確かに99基だった…。その瞬間ゆらりと視界が歪み、頭の中で深い声が響いた。

『…汝、此度で100度目の来社也。月満ちる日にめでたき節目を迎えた寿ぎに、汝の望み、我が叶えるもの也…』

轟っと風が吼え、静寂が戻った。気がつくと東の空に狐色の月が上っている。
「…満月…」
ふらつく体で月と鳥居に頭を下げ、車に戻ると同時にスマホが光る。メール?
『最終選考通過のお知らせ』
私は雌叫びとともに、拳を空に突き上げた。
ファンタジー
公開:20/01/05 17:50
更新:20/01/05 18:01
誠に残念ながら この話はフィクションです 満月の夜と 逢魔が時の神社には注意 今月の満月は11日

秋田柴子

2019年11月より、SSGの庭師となりました。
現在SSから長編まで幅広く書いております。

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞1回 入選2回
・SSG 空想競技コンテスト 入賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・SSマガジン『ベリショーズ vol.5,6,7,light』掲載(Kindle無料配信中)
https://www.amazon.co.jp/dp/B096821HSW

【近況】
 いろいろ書いてます(笑)

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