破られた決まり(夢餅2話目)

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夢を練り込んで作る夢餅は、夢がその年に叶うなら暖色に、努力を要するなら黒に染まる。ただ一つの決まりは『残さず食べること』、それを破った人がいる。彼女は高給取りとイケメンに目がなく、将来は玉の輿に乗りたいと思っていた。彼女は夢餅の存在を知ると、迷わず餅をつき始めた。それからちょうど一晩が経つころ、夢餅は一瞬にして真っ黒く染まった。
「は!?こんなに苦労したのに!」
彼女はあろうことか夢餅を一口も食べずに捨ててしまった。決まりを破ったことを後悔し始めた次の日、真っ黒な夢餅はゴミ箱から無くなっていた。

その年、彼女はイケメンと出会ったが、結婚寸前で音信不通になった。現在は夢と真逆の生活を送っている。
「私が決まりを守っていれば…」
何をするにも黒い夢餅が頭から離れない。憔悴しきる彼女の腕には玉のような赤ちゃんが抱かれていた。ぼうっと明後日を見つめる彼女を見上げ、赤ちゃんは笑いかける。
その他
公開:20/01/06 21:40
更新:20/01/06 21:40

みみ

むかし話、おとぎ話が小さい頃から大好きです。
誰かの目に留まるような物語が書けるように頑張ります!

コメントや☆をつけてくださる方、本当にありがとうございます。嬉しいなぁ、幸せだなぁと心から思いますm(_ _)m

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