猫と煙

トムは炎に包まれる我が家を見上げ、泣き続けた。
優しい家族も、幸せな日常も、悪魔が全て奪い去ってしまった。
僕に戦う力があったら…トムは後悔した。
だから泣くのを止め、悪魔に復讐する為に己を鍛え始めた。
指先から血が滲む。それでも岩に爪を突き立てる。爪を研ぎ澄ませ、どんなものをも引き裂く爪に鍛え上げた。
口の中に血の味が広がる。それでも岩に噛り付く。牙を研ぎ澄ませ、どんなものをも噛み砕く牙に鍛え上げた。
そしてトムは悪魔と再会する。トムは悪魔を鋭い爪で切り裂いた。強靭な牙でその喉に食いついた。
トムは悪魔を倒した。悪魔は塵となり、煙となって空へと昇って行く。
それを見届けたトムは正式に悪魔狩りとなった。トムは伝説の猫だ。
そんなトムの墓には今も悪魔狩り見習いの猫がやって来てはその墓石に爪と牙を突き立てる。
これは悪魔狩りとなる猫の通例だ。
これぐらいで折れるようじゃ、猫は飼い主を守れない。