雪渡出麦 ゆきわたりてむぎいずる

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ドシーン!ドシーン!

「うるさいなぁ」
半分仮死状態の私は騒ぎに目を覚ます。隣で寝ていた嫁も、春になり雪が溶けた水の流れの音と勘違いしたのか、ケロっと鳴きながら外へ出ようと短い手足をバタバタ動かす。
「おい!蛙子!寝ぼけるな!外に出たら秒で死ぬ!」
ハッ!目を丸くして蛙子は正気に戻り、私に尋ねた。
「何なのよ?この音は」
私は胸に手を当て、体内時計を確認する。
「2019年12月31日23時57分18秒…年が変わる頃か…蛙子よ、今年の干支はなんだ?」
「確か、亥…」
「なるほど、亥麦が子麦を押しているのか。噂には聞いていたが猪突猛進。凄い音だな」


ーー寒い雪の下、春を待つ麦はそっと芽吹く。
その合図はその年の十二支麦が、除夜の鐘を合図に、次の干支麦に初春が来たと大きく土を動かしながら、次の麦に体当たりするのだ。

2020年は子麦。
春、地上へとチューと1番に顔を出す麦だ。
ファンタジー
公開:20/01/04 15:04
更新:20/01/04 18:27
新年のご挨拶ショートショート 七十二侯

さささ ゆゆ( 東京 )

最近生業が忙しく、庭の手入れが疎かな庭師の庭でございます。

「これはいかんっ!!」と突然来ては草刈りをガツガツとし、バンバン種を撒きます。

なので庭は、愉快も怖いも不思議もごちゃごちゃ。

でもね、よく読むと同じ花だってわかりますよ。


Twitter:さささ ゆゆ@sa3_yu2





 

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