可愛い孫

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私は孫の姿を見ると、よっこらせと体を起こした。
「おお、ゆきちゃん」
「おじいちゃん、あけましておめでとう」
「おめでとう。よく来たね」
毎年正月になると孫が遊びに来る。
妻を亡くして以来、私はすっかり体の調子を悪くしてしまった。こうして孫が遊びに来るのが、唯一の楽しみだった。
「ゆきちゃんも大きくなったなあ。今年中学生だっけ」
「えっ? う、うん」
孫は困ったような表情で頷いた。その仕草がまた可愛らしい。私にとっては、いくつになっても小さい子供のままだ。

「それじゃ、そろそろ帰るね」
「そうだ、お年玉をあげよう」
私はポチ袋を探して辺りを見回した。
「やだな、おじいちゃん。さっき貰ったよ」
そういって、孫はポチ袋を私に見せる。
「そうだったか。どうも最近物忘れが激しくてね」
「うん。それじゃまた」
「気を付けて帰るんだよ」

祖父に別れを告げ病室を出ると、私は待っていた夫の胸で泣いた。
その他
公開:20/01/04 22:03

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