花なんか好きじゃなかった
6
5
花なんか別に好きじゃなかった。
ただ家から出れない妹の為に折り紙で花を折った。妹は歩く事も大きくなる事も無く布団の中から「おにい」と僕を呼んだ。
高等学校へ進学し家を出なければいけない日、妹に毎日折り紙の花を贈る事を約束した。
高等学校は楽しかった。こんなに開放的なのは初めてだった。妹が疎ましく、花は折らなくなった。3年間、一度も家に帰る事なく、卒業を迎えた。
三年ぶりの我が家へ帰宅し妹の部屋へ向かう。妹は其処に居た。何も変わらぬ布団に横たわり、幼いまま。
人形が、そこに、あった。
父母を問い詰める。妹は何処かと。父母は静かに話した。
幼い頃、死んだ妹を離さなかった事。泣き疲れた僕の手に人形を抱かせ、妹を荼毘に付した事。人形を妹と呼び始めた事。
思い出した。
僕が、妹を死なせてしまった。
妹はもういない。
いくつかの滴が畳を音を立てて叩く。
濡れた睫毛がゆっくりと下を向いた。
ただ家から出れない妹の為に折り紙で花を折った。妹は歩く事も大きくなる事も無く布団の中から「おにい」と僕を呼んだ。
高等学校へ進学し家を出なければいけない日、妹に毎日折り紙の花を贈る事を約束した。
高等学校は楽しかった。こんなに開放的なのは初めてだった。妹が疎ましく、花は折らなくなった。3年間、一度も家に帰る事なく、卒業を迎えた。
三年ぶりの我が家へ帰宅し妹の部屋へ向かう。妹は其処に居た。何も変わらぬ布団に横たわり、幼いまま。
人形が、そこに、あった。
父母を問い詰める。妹は何処かと。父母は静かに話した。
幼い頃、死んだ妹を離さなかった事。泣き疲れた僕の手に人形を抱かせ、妹を荼毘に付した事。人形を妹と呼び始めた事。
思い出した。
僕が、妹を死なせてしまった。
妹はもういない。
いくつかの滴が畳を音を立てて叩く。
濡れた睫毛がゆっくりと下を向いた。
その他
公開:20/01/02 18:55
アイコンは壬生野サルさんに描いて頂きました。ありがたや、ありがたや。
ログインするとコメントを投稿できます