鮭ロック

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帰省していた田舎をあとにする。会う度に小さくなる両親の姿がバックミラー越しにますます小さく点になる。
外は急な豪雨で轟音だ。バラバラと雨が窓を叩く。
高速に入ると、雨で川のようになった道路いっぱいに何かの大群が泳いでいた。キラキラと鱗が光る。鮭だ。鮭の帰省ラッシュだ。
人間たちのUターンラッシュも何のその、車の間を縫って産卵の為に生まれ故郷の川を目指していた。
(そういえば)母が持たせてくれたおにぎりを取り出した。
「帰りの車で食べんしゃい」
ギュッと握られた塩の効いたおにぎりが口の中で解ける。ほらね、やっぱり俺の好物の鮭だ。
高速道路が川に差し掛かると、鮭たちはシャウトしながら次々とダイブした。
産卵を終えた鮭は死ぬ。命を繋ぐためだけに時に何千キロも上っていく。

カッケーな、生き様がロックだ。
俺も何か繋ぎたい。
まだ温もりの残るおにぎりを噛み締めて、柔くなってた意思を固く握り直した。
その他
公開:20/01/02 18:53

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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