お蔵入り

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 友人が監督した映画が、ようやく公開されることになった。
 資金面でかなり苦労したと聞いていたが、完成して良かった。
 劇場の受付で客を出迎える監督の顔は誇らしげだ。
「おめでとう」
「ありがとう。楽しんでくれ」

 映画が始まった。
 感動的な親子の絆の話だ。
 不自然に挟まれる、あるもののアップが無ければ、号泣していただろう。
 ハリウッド映画でもみる、スポンサー絡みの商品を目立たせるアレだ。
 彼の映画は、この会社にスポンサーになってもらったのだろう。

 映画が終わって、感想を聞いてきた彼に俺は答えた。、
「スポンサーとはいえ、やたらオクラが出てくるのは不自然だ。お蔵入りの代わりにオクラ入りって、洒落にもならない」
「無理にオクラのシーンなんて入れていない」
「大人の事情があるのは、わかる。でも……」
「お前、俺の映画をちゃんと見てたのか?」

 あればオクラじゃなくて獅子唐だ。
その他
公開:20/01/02 08:36

堀真潮

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