百年の犬 ―初夢2020(抄)

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 こんな初夢を見た。
 網代の干物屋のカウンターが中学校のLL教室のベランダで、中学校の同級生達はバスに乗り込もうとしていた。僕だけが自転車で泥だらけの箱根を越え、その峠で撮影した写真には柴犬が写っていたので、僕は「もう100年か」と思う。バスを見失ったまま中学校に戻ってくると、正門から校舎まで続くコンクリートの上り坂が、途中のテニスコート二面分の窪地を呑みこんで、その勾配は人跡未踏だった。僕が相模湾を横断するジェットホイルの咆哮を無視してペダルを踏むと、前を柴犬が横切る。僕は「もう100年か」と思う。LL教室には200年前の同級生達が済まなさそうに「僕達は船に乗ったんだ」と口々に言いながら、パレットの油絵具を舐めている中に柴犬もいて、「もう100年か」と思う。でもさすがに、この100年が、過ぎ去ったものか、戻ったものかは分からない。犬の首輪には「Don't disturb」と刻んである。
ファンタジー
公開:20/01/02 07:56

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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