空の彼方へ

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王妃が病に伏せて一年。王は国中の名医を城に呼び寄せたが、王妃の病は治らなかった。王妃の命は、おそらくあと数日。王が覚悟を決めた時、魔法使いの男が城に訪れた。王妃の元へ案内された男は、やせ細った王妃の頬に手を当てた。
「いずれこうなると思っていた」
男は静かに語り始めた。彼女は元は人間ではなく、翼を持つ種族、翼人族であった。ある時、森で王に出会い恋をした。彼女は男の秘薬により翼を捨てた。やがて王が彼女を見初めて妻とした。しかし、翼を失い空の恵みを得られない翼人族は長生きが出来ない。
「秘薬を持ってきた」
「それを飲ませれば妻は治るのか?」
「死ぬことはない。ただ…」
男の言葉を最後まで聞かず王は薬を奪い王妃に飲ませた。
その瞬間、王妃は白い小鳥に姿を変えた。小鳥は翼を広げて羽ばたくと、クルリと王の頭上を舞い、開け放たれた窓から外へ飛び立った。
空へと帰った小鳥を、王はいつまでも見つめ続けた。
ファンタジー
公開:20/01/02 01:19

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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