宣託器

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近所の神社へ初詣に行くと、おみくじ箱の代わりに球体の手回し洗濯機が置いてあった。これは昭和期にあったと思しきレトロな年代物だ。
掲示板の説明には「宣託器」とあった。操作方法も記載されており

一、宣託器の横に積んである布切れを一枚選ぶ。
二、宣託器に百円玉を投入すると蓋が開く。
三、宣託器の中に布切れを放り込む。
四、柄杓で掬ったお清めの水を加える。
五、蓋を閉めてから宣託器に付いている手動のハンドルを一回転させる。
六、蓋が自動的に開くので布切れを取り出す。
七、最後に排水して必ず蓋を閉じる。

上記の操作を行うと、布切れに文字が浮かび上がり、今年の運勢が書かれているらしい。
早速、手順に従い操作してみると、確かに布切れに何やら文字が書かれていたので読んでみた。

『邪悪な汚い心は不潔であり、純粋な気持ちをもって清潔になるべし。これ心の洗濯なり』

なるほどと妙に納得して神社を辞去した。
その他
公開:20/01/02 00:03
更新:20/01/02 22:52
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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