神、対応。

元旦。

神は本殿の中で初詣に来る人々を観察していた。皆の願いは耳に届いている。ただ残念ながら、それはほぼ叶えられない。神とて全てを賄うのは不可能。しかし今年、神は一人の男に注目していた。

「『花園遥と両思いになりたい』、これで五年連続…。一途な恋、叶えてやりたいのう」

初詣客も落ち着いた頃、神は神社を抜け出し、様子を見に男の部屋へ向かった。

「なんじゃこれは！」

部屋の壁はポスターで埋め尽くされ、肝心の男はテレビに映るアイドルに釘付け。

「なるほど、そういうことじゃったか…。しかし、多少はいい思いをさせてやるか。調べてみよう…」

半年後。ライブ会場で男は狂喜した。

「今っ！遥タン、絶対俺にウインクしたよねっ！」

その様子を、神は男の後ろで見守っていた。

「…勘違いしているが、あのウインクはわしにじゃ！遥タン…調べるうちにハマってしもうたわい！ああっ、遥タン…マジで神！」