恋しい空

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帰り道。
ジャケットだけだとそろそろ寒くなってきた。
うるさい街の明かりと流行りの音楽が聞こえてくる。
僕は、なんとなく、寂しくて。

「もしもし?今、ちょっとだけ、いいですか?」

『大丈夫だよ。何か?』

落ち着いた優しげな声があたたかい。
僕にだけ特別というわけではないけど。

「え、あ、えーと…月が! 月が大きく見えるので…」

話題など考えていなかったので、咄嗟に見上げた空に見えたものを言ってしまったが、そんなのは僕のキャラじゃない。

『へぇ…ちょっと待って。今、見てみるー』

言ってすぐに後悔していたが、この人の好みの話題だったようだ。
覚えておこう。

「もう家ですか?」

『そう!今日は早く帰れたから…おー!なんか大きく見えるね!』

「でしょ!!」

他愛もない会話は続き、僕は空を眺めながら、あたたかい声に恋しさを募らせる。
寂しさは少しだけ去っていた。
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公開:20/01/01 20:05

恵み( 東京/福岡 )

生き物を眺めて、本能を眺めるのが好き。
一生懸命な人を応援したい。
やりたいと思うことはたくさんあるけど、実行できないまま月日が過ぎて、そろそろ恐ろしいです。
第一歩、ということで書いてます。
ほめてのびるタイプです、ふふふ。

☆2020年目標☆
週1投稿!!
自分なりに奮闘中!
今のところ、水曜日にそーっと勝手にお届けしております。
遅れてたら微笑んでください…

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