巡る季節

　後悔していることがある。
　私の成人式の日、なぜ母に着物姿を見せてあげなかったのか。
「着物なんていいから、お祝い金ちょうだい」
　幼かった私は、そんな言葉を言って母を困らせた。
「着物なんて着たくないから」
　私がそう言い放った時の、本当に哀しそうな母の顔。

　そしてあの情景は、私に巡り巡ってきた。
「私、着物なんて興味ないから」
　私はきっと、あの時の母と同じ顔をしている。
　私は娘に返す言葉が見つからなかった。

　次の日の朝、娘は起きてくるなり、
「お母さんも成人式に着物を着なかったの？」
　ビックリして振り返ると、
「夢の中で、死んだおばあちゃんに怒られちゃった。お母さんの着物姿を見られなかったのに、あなたまで見せてくれないのって」
　私は泣きながら、
「私の代わりにおばあちゃん孝行してくれる？」
　そう言うと娘は、
「仕方ないな、着物着るか」
　笑顔で答えてくれた。