私にさよなら。

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「今年が終われば、何になるんだろう?」
 私はベッドの上で目を瞑り、そんなことを考えた。
 今年が終われば、来年になる。
 明日からは新しい年が始まる。

 私はどうなるのだろう?
 生まれ変わるのかな…
 来年の新しい私へと。
 そして、今年の私は来年の私に消されてゆくのかも知れない。
 ノートに書かれたものを、消しゴムで消してゆくように…
 少しずつ、少しずつ消えていく。
 残るものは、消し跡の残ったノートと、消しカスとなった今年の私。
 消しカスは捨てられて、消し跡の残ったノートには、来年の私を書いていく。
 そして、それを繰り返すのだ。
 私が終わる、その時まで。

 窓から、音が聞こえてきた。
 一つ、また一つ。
 数を刻む鐘の音。

 やめて!私を消さないで!今年の私を…

 108回目の鐘の音が響く時、彼女は眠りについていた。
 私を消して、私になるために…。
その他
公開:19/12/31 20:25
更新:19/12/31 20:43

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