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僕が幼い頃、母が炎の如く真っ赤な赤毛の猫が描かれた絵を買ってきた。僕はその絵が怖かった。
「どうして?素敵な絵じゃない」
そう言う母も怖かった。母は父が亡くなってから変わってしまった。
過労死した父の復讐をしてやると毎日呪いの言葉を吐いていた。
そんな母がこの絵を購入したその日から元の優しい母に戻った。
「この絵を見ているとね、私の中の炎が絵に吸い込まれていく気がするの。おかげで今じゃ煙一つ出ないわ」
そう言われ、恐る恐る見た猫の絵は確かに買ってきた日より赤が濃くなっている気がする。
「大丈夫。貴方は私が守ってあげるから」
そう言って抱きしめてくれた母の手に僕は安心した。
僕は猫の絵が怖かったけど、感謝もしていた。

そして今、久しぶりに絵を見てみるとそこに赤毛の猫はいなかった。
代わりに炭のように真っ黒な猫とそれを抱く女性の姿が描かれている。
その女性は先日亡くなった母にそっくりだった。
ミステリー・推理
公開:19/12/31 18:05

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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