紙飛行機は上昇気流にのって

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彼女は詩が好きだった。でも書くのはなぜか旅先にあるお客様ノートばかり。しかも恥ずかしいからと一切僕に見せてくれない。外出が許された最後の旅行でも結局見せてはくれなかった。

彼女が旅立って1年。僕はふと彼女の詩が気になり、二人で行った旅先をもう一度巡る。彼女の詩は一向に見つからない。

ところが最後に行った八甲田ホテルでようやく見つかった。それは僕の名前と『ありがとう』というほんの小さな言葉だった。


僕も書いてみよう…

列車の中でメモ帳を取り出す。

今日車窓から見えたのは虹でした
赤青黄
僕には三色しか見えない
だけど虹の向こうにいつも君が見える
一瞬の透きも逃さない君は
七色よりもっと多くの
色が見えているのだろう
君が見えたクレパス
僕にも見えるように

恥ずかし!

僕は破り取って紙飛行機に。すると急に風が吹き紙飛行機は窓の外へ、積乱雲の上昇気流に乗って大空へと飛んでいった。
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公開:19/12/31 17:52
更新:21/11/10 21:52
節目

数理十九

第27回ゆきのまち幻想文学賞「大湊ホテル」入選
第28回ゆきのまち幻想文学賞「永下のトンネル」長編佳作
一期一会。
気の向くままに書いては、読んで、コメントしています。
特に数学・物理系のショートショートにはすぐに化学反応(?)します。
ガチの数学ショートショートを投稿したいのですが、数式が打てない…
書こうと考えてもダメで、ふと閃いたら書けるタイプ。
最近は定期投稿できてないですが、アイデアたまったら気ままに出没します。

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