時よ、物語よ

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歳を取るごとに、好みや生活スタイルも変わる。そんな訳で実用書ばかり読んでいた私は、気紛れで昔読んでたお気に入りの本を開いてみた。

だけど仕事に追われ、余裕のない今の私。こんな現実離れした話絶対起こらないのに、何で昔は面白く読めたんだろう。そう思って溜め息をつく。心が変わってしまった私自身への溜め息を。

そんなことないのよ。

声が聞こえた。

私達は生きてて、あなたが好き。あなたが今必要じゃなくても、私達は姿を変え、何度でもあなたに寄り添える。

本も生きてる。その気付きが私の節目。その後、本から受け取ったことはどれだけ多いだろう。

時が立ち、今度は私が物書きになった。

手をかけ共に歩み、手放す。こう言うことかと思った。たしかに物語は私の意図と別に、意思をもって旅立つ。私の物語も、思いもかけないところで誰かを救うことがあるのだろうか。その連鎖は、時を越えて繋がればいい。そう思った。
公開:19/12/31 17:39
更新:19/12/31 17:40

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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