人生のレール

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「私、そんな敷かれたレールに乗りたくないから!」
彼女は両親に教科書を投げつけた。

僕は父親を継ぎ、人生のレールを描く仕事をしている。親御さんの気持ちを汲んで、未来へ導く七色のレールを描くのが僕の誇りだ。しかし最近は両親が考えた将来を子供は見向きもしない。果たして僕の仕事は誰かの為になっているのだろうか。

両親との喧嘩は続いている。おそらく僕の描いた七色のレールは使われない。

そういえば僕のやりたい事ってなんだっけ。

「自分の人生は自分で決めるの!」
彼女は大事そうにボクシングのグラブを抱えた。両親はそんな娘の姿をみて立ちすくんでいる。

僕は皆に笑顔になって欲しかったんだ。こんな悲しい顔は見たくない。

彼女がデビュー戦に負けた夜、僕は夜空に七色のアーチを描いた。アーチの向こう側を泣きながら見つめる彼女が羨ましく美しかった。

そして僕はゴメンと呟き、足元のレールから降りた。
ファンタジー
公開:19/12/31 16:30
節目

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

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