幸せな朝日

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冷たくて息も凍る、刺すような空気。薄明るい空に遠い街灯の橙色。白い月。
海面にルビーのような輝きで、太陽がその姿を現す。燃えながら、輝きながら、今年もはじまりの合図を告げる。
彼の瞳に映る太陽の光があんまり美しくて、私は思わず見惚れてしまう。
「綺麗だね」私が言うと彼は「そうだね」と笑った。
違うよ、君のことだよ、私はそう言いそうになったけど、あんまり幸せだったのでそんなことどっちでもいいか、と微笑み返した。
「新婚旅行でここにこれて本当によかった」
「うん、日本のお正月っていいもんだな」
「おせちって美味しいのね」
太陽がゆっくりと昇ってくる。辺りは朝焼けに包まれ、観光客も皆、その美しさに目を輝かせている。
「私達、幸せになりましょう。そしていつか、子供を連れてまた来ましょう」
「ああ」
明けの明星がちかちかと瞬く。
「見て、私達の星よ。綺麗ね」
今晩、私達はスペースシャトルで帰郷する。
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公開:20/01/01 09:34

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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