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白髪男は目を閉じている。赤唇男はニヤけている。白髪男の女房は、赤唇男に対して激昂している。中央にはちゃぶ台がある。
「私が眠ったと思って、あなたは明け方まで私に吸い付いていたじゃありませんか! 私には子はおりませんのに!」
女がそう言うと、赤唇男がクツクツと笑い、白髪男が目を見開いた。女はハッと口を押えた。
「お前はしばらく外してくれ」
夫の声が女の骨身に響いた。頬は青ざめ、顎はガタガタと震え始め、全身が硬直してしまって呼吸もままならなかった。
「散歩でもしてこいと言ってるんだ!」
かつて聞いたことのない夫の怒号に、女は弾かれるように表へ転げ出た。だが行く当てなどなく、東の空が白むまで、軒先で犬の遠吠えを数えて部屋に戻った。
部屋には白髪男だけだった。男は女を見つめ「心配はない」と言った。女はうれしかった。だから、部屋のちゃぶ台が無くなっていることなど、少しも気にならなかった。
「私が眠ったと思って、あなたは明け方まで私に吸い付いていたじゃありませんか! 私には子はおりませんのに!」
女がそう言うと、赤唇男がクツクツと笑い、白髪男が目を見開いた。女はハッと口を押えた。
「お前はしばらく外してくれ」
夫の声が女の骨身に響いた。頬は青ざめ、顎はガタガタと震え始め、全身が硬直してしまって呼吸もままならなかった。
「散歩でもしてこいと言ってるんだ!」
かつて聞いたことのない夫の怒号に、女は弾かれるように表へ転げ出た。だが行く当てなどなく、東の空が白むまで、軒先で犬の遠吠えを数えて部屋に戻った。
部屋には白髪男だけだった。男は女を見つめ「心配はない」と言った。女はうれしかった。だから、部屋のちゃぶ台が無くなっていることなど、少しも気にならなかった。
ファンタジー
公開:20/01/01 00:55
更新:20/01/01 01:10
更新:20/01/01 01:10
新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。
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