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新しい命が生まれ、柔らかな風そよぐ日。
一羽の蝶が今まさにその一生を終えようとしておりました。

「言葉をください」
と、リスがこぶりのノートをポケットから取り出しておずおずと進み出ました。その眼に涙がにじんでいるのは子リスが蝶を心から慕っていたからです。

「季節が廻れば葉は色付き枯れ 風吹けば枯れ葉は地に落ちる」
蝶は優しく子リスの頭に触れてささやきました。

「小さく弱きものは世界にこの身をどのように打ち立てればよいのでしょうか」
てんとう虫の母親がたずねます。


「みんな」に好かれたいと思っているうちはまだ卵のなかで、
「このひとに好かれたい」は幼虫、「わたしはこう生きたい」は成虫で「孤独に立ち向かう」はサナギ。「世界に向けてこう在ります」は蝶々で、最後はすべての人と共にある。


新しい春は次の冬に向かうことでもあるからねと、
蝶はゆっくり羽をひろげ風のなかに舞うのでした。
その他
公開:19/12/31 23:50

マリー

✿〜・言葉をあつめて花束を・〜✿
 

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