エアポート

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私は窓際に一席しかない豪華なシートに案内された。
飛行機は久しぶり。
シートベルトはどう閉めるんだっけ?私がガチャガチャと手間取っていると、客室乗務員が助けてくれた。
「乗務員さん…私なんか怖いわ」
「大丈夫ですよ。慣れていらっしゃる方はいませんから」

トゥン

飛行機が動きだす。外は真っ暗、滑走路の白や青、赤などのライトが綺麗に並んでいて幻想的だ。
「お客様、ライトの光を目を凝らしてご覧になって下さい。今までの思い出が投影されています」
私はライトを見た。
結婚、出産、子供の成長…
涙が止まらない。

トゥン トゥン

「お客様は八十八年の人生でしたから。滑走路が長いんですよ」

最後のライト。
私が静かに息を引き取り、駆けつけた息子が「母ちゃん!!」と言って嗚咽した。

グゥン

上空へ、上空へと移動して行く。

下を見つめる。
小さな小さな景色の中に私の愛する人はいるのだろうか。
その他
公開:19/12/31 23:17
節目

さささ ゆゆ( 神奈川 )

最近生業が忙しく、庭の手入れが疎かな庭師の庭でございます。

「これはいかんっ!!」と突然来ては草刈りをガツガツとし、バンバン種を撒きます。

なので庭は、愉快も怖いも不思議もごちゃごちゃ。

でもね、よく読むと同じ花だってわかりますよ。


Twitter:さささ ゆゆ@sa3_yu2





 

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