振り子が止まった日

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家には私が生まれた時から振り子があった。その振り子は、私が生まれる前からずっと往復運動を続けていたそうだ。
振り子は摩擦や空気抵抗を無視すれば、理論上は半永久的に運動を続けるという。悩みもなく毎日同じ運動を繰り返す振り子を、時には羨ましく思い憧れもしたが、「面白味がない」と疎ましく思い遠ざけたこともあった。しかし、そんな私の気持ちなどお構いなしに、振り子は踊り続けた。

ある日突然、振り子が止まった。いつかこんな日が来るとは想像していた。けれど、いざ止まった振り子を目にすると、傷つきすり減ったその姿に、私は自然と感謝の言葉が溢れた。

父は絵に描いたような仕事人間だった。遊びもせず、ただ家と職場を行き来する毎日だった。定年を迎えた父の身体は、驚くほど小さくなっていた。弱音も吐かず働き続けることがどれほど大変だったか、私には知る由もない。

振り子のように働き続けてくれた父を誇りに思う。
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公開:19/12/31 22:51
更新:19/12/31 22:53

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