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「春さん! お願いします!」
 村の小さな助産院に静かに緊張が走る。春さんが故郷の助産院を受け継いで、もう50年になる。春さんもここで産まれた1人だ。なんとかこの村や助産院に恩返ししたいと続けてきたが、寄る年波には勝てず、数年前からは持病も悪化し、今回のお産を最後に引退することになっている。

 お産が佳境を迎えた所で、春さんは急激に体調を崩し意識が遠のいた。
(ああ、神様。私の命はどうなってもかまいません。どうか、このお産だけは無事に務めさせてください)
 赤ちゃんをとりあげた瞬間、春さんは倒れた。しかし周りの声だけは聴こえる。
「春さん! 大丈夫か⁈ とりあえずこっちへ運べ!」

 暫くして春さんの体は温かさに包まれる。(産湯⁈)
 優しい声。
「無事に産まれてきてくれてありがとう。あなたの名前は亡くなられた恩人から一文字いただいたのよ。小春ちゃん」
 命は受け継がれ村に再び春が来た。
ファンタジー
公開:19/12/31 22:23
更新:20/05/25 13:48

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
 どうかよろしくお願いいたします。

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