節目飴
6
8
歴史のある飴屋だった。弟子たちは日々、水飴を薄くのばした。これを節目と呼び、何層にも重ねて丸めた。看板商品の名は人生。口に入れれば、節目ごとに変化する味を楽しめた。
たとえばこう。最初に感じるのは乳臭さ。じきに初恋のレモン味が広がり、その奥から青春の甘酸っぱさも顔を覗かす。新社会人らしい青臭さを経て、次に舐めるのは辛酸や苦汁。でも最後には必ず、ほんのりとした甘味が残る。飴玉が消える直前のうま味は、人生ならではの醍醐味とも言われる。
唯一無二の味わいに、老舗の油断があったのかもしれない。ある日、社長が青い顔して得意先から帰ってきた。
「飴玉を埋め込もうにも、近ごろは宿るイノチ自体が少ないんだと。いくら神様でも、どうにもならんって。どうすっかな、こんな返品抱えちまって…」
舌の上で渋味が弾けた弟子たちは、一様に顔をしかめた。
「節目です。でもここで吐き出しちゃ、人生台無し…ですよ」
たとえばこう。最初に感じるのは乳臭さ。じきに初恋のレモン味が広がり、その奥から青春の甘酸っぱさも顔を覗かす。新社会人らしい青臭さを経て、次に舐めるのは辛酸や苦汁。でも最後には必ず、ほんのりとした甘味が残る。飴玉が消える直前のうま味は、人生ならではの醍醐味とも言われる。
唯一無二の味わいに、老舗の油断があったのかもしれない。ある日、社長が青い顔して得意先から帰ってきた。
「飴玉を埋め込もうにも、近ごろは宿るイノチ自体が少ないんだと。いくら神様でも、どうにもならんって。どうすっかな、こんな返品抱えちまって…」
舌の上で渋味が弾けた弟子たちは、一様に顔をしかめた。
「節目です。でもここで吐き出しちゃ、人生台無し…ですよ」
ファンタジー
公開:19/12/30 18:38
更新:19/12/31 10:52
更新:19/12/31 10:52
400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。
ログインするとコメントを投稿できます