バースデー定期を頂戴

突然、誕生日が来なくなった。これから誕生日を迎えるには国から配布されるバースデー定期が必要であり、私はその定期を持っていなかったのだ。もういい年だし、余計な悩みが減ってバースデー平気などと笑っていた。

しかし周囲が素敵に年齢を重ねていく上、書類に年齢を書くと怪訝な目で見られるのが辛くなってきた。

ねえ誕生日。来て。

そこで私にもバースデー定期が届いていないか部屋を捜索した。すると本棚の隙間からバースデー定期の入った封筒が。封を開けるとそこには夢にまでみたイチゴ柄の白いバースデー定期が。明日こそ久しぶりの誕生日が来る。部屋を綺麗に掃除し、シャンパンとキャビアそして久しぶりのバースデーケーキを冷蔵庫に用意した。
ふとテーブルに置いた定期を見ると有効期限が去年までだ。これはどういう事だろう。



「あの人掃除嫌いだったのにね。せめて亡くなる前は身の回りを綺麗にしようって思ったのかしら」