ネットおばちゃん

いつも庭いじりをしながら、話し相手を待ち受ける近所のおばちゃんがいる。
前を通ると「どこへ行くの？」と話しかけてくる。「そこまで」と適当に答えたなら、「散歩？」と次なる質問がでる。変に「病院」とか答えれば、「どこか悪いの？」、答え方によっては「私の知り合いは、田丸病院で診てもらって、体調が良いみたいよ」とか、「散歩で太陽に当たるとビタミンDが吸収されて骨密度が高くなるわよ」とか、「一万以上歩かないと足腰が丈夫にならないよ」とか話が続いていく。

近所の人たちは、おばちゃんのおしゃべりを熟知していて、おばちゃんの家の前を通るときは、腕時計を見ながら小走りでその場を立ち去ったり、スマホを見るふりをしながら通過するなど、おばちゃんを避けるのに苦労している。

おばちゃんは、大きな網を片手に通行人を捕獲する手段にでた。これで捕獲率が百％となり、蜘蛛のようにネットおばちゃんはニンマリと微笑んだ。