ばかされて

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今年ももう終わりか。
吉蔵は年越しそばのどんぶりをコタツに持っていく。
妻を亡くし、一人身はこたえる。

「おっとこいつがいたか」
ズボンを引っ張られたような気がして振り向くと一匹の子狸がいる。
ぽん吉と名付けたこいつは人懐こいがいたずら者だ。
そばを食べようとするとなんとびっくりうどんに変わっていた。

「また。ぽん吉のいたずらか」
「ぽん吉がどうしたの?」
声に驚くと目の前には死んだはずの母が若い頃の姿で立っていた。
驚いて声もでない私に手を伸ばしてくる。ひんやりした手が心地よい。
「大丈夫? 熱はないようだけど」
「あ、ああ大丈夫」
「そう、冷めないうちに食べてね」
一口すすって思わず泣きそうになった。
ああ、これだ。おふくろの味。
気がつくと器は空になっていた。

涙をぬぐうとにんまりとしたぽん吉が膝に乗っていた。
化かされたか、こんちくしょう。でもまた頼むな。
ファンタジー
公開:19/12/31 08:55

ばめどー

ぼちぼちやっていこうと思います。
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