金の小鳥の飴細工

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逃げ場の無い閉鎖空間が、ある日いきなり駄目になった。治療の日々を重ね、何とか今日、この場にいる。これから私は飛行機に乗る。暴露療法というらしい。復活か、再び挫折かーーわずか二時間のフライトが、私にとっては節目の旅となる。
嫌な汗が体を伝う。機体は恐るべき速さで離陸した。小窓から覗く景色が、ぐんぐんと遠ざかってゆく。


光に満ちた静かな空間に立っていた。
「ミチおばちゃん……」
数年前に亡くなった、祖母の姉が立っていた。生涯独身だったミチおばちゃん。私を孫の様に可愛がってくれた。
「どうしたの」
彼女はにこりと笑い、両手を差し出した。その中にあったのは、金に輝く小鳥の飴細工。
「くれるの?」
そっと受け取ると、優しい気持ちが流れ込んできたーー


ドンッという衝撃に目を覚ます。
「ただいま、当機は那覇空港に到着致しました。天気は快晴……」

大丈夫ーーそんな声を、夢現に聞いた気がした。
その他
公開:19/12/30 23:55
更新:19/12/31 00:09
ベルモニー 節目 現代ファンタジー ヒューマンドラマ

柊七十七

WEB小説執筆遍歴: エブリスタ(お休み中)→時空物語(サイト閉鎖)→ショートショートガーデン 現在に至る。

詩と、短編書きです。

#付きタイトル作品
幻想世界シリーズ: ひとつひとつは独立の世界です。日常のふとした思いや、ある日見た印象的な夢など。
ヒトのココロの暗い部分シリーズ: 暗い詩。

#無しタイトル作品
コンテスト参加用。

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