読書の節目研究家との会遇

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喫茶店。読み終えた本の余韻に浸ろうかという時、隣に座る初老の男性に話しかけられた。
「失敬、その本は新品かね」
「え……はい」
不意に現実に引き戻され、ぶっきらぼうに返すも、男性は構わず続ける。
「私、こういう者、少々そちらの本を拝見してよろしいか」
差し出された名刺には、氏名の他に『読書の節目研究家』の肩書。訝しみつつ本を差し出すと、ルーペを片手に「やや……ゆゆゆ……よよよよ」と、独特な独り言を発しながら何度も頁を捲る。
「君は社会人かね」
「そうです」
「間隔の短い節目が10、長く2、月曜から金曜勤務で土日が休みだ」
「は、はい」
「職場まで電車で然程遠くない場所……おや、短い節目の間に小さな節目、途中で1度乗換があるな」
「えっ、なんか怖い」
「仕事後は真っ直ぐ帰って、休日も読書……友人はいないのかね」
「余計なお世話だ!ちくしょー!」
この会遇が、後に人脈王と称される僕の節目の話。
その他
公開:19/12/30 23:20
節目

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