伏し女

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高三の春に、はじめて伏し女を迎えた。
父の遺した洋食屋を兄が継いだ年に母が招いた。挨拶するなり、店の床に横たわるので驚いたけれど、それ以上に美しい肢体に胸が鳴った。
まろやかな背中をせーので跨ぎ越す。生まれ育った店内が、見知らぬ輝きをはなつ新しい場所に思えた。

大学をでた私は、経理方面から店を手伝いはじめた。やがて甥が厨房を仕切るまでになった頃、兄が言った。
「そろそろ好きなことしたら」
十分そのつもりでいたのに。
一晩考えてみると、どうしても行きたい国がある。
家族に暇を告げて飛び立ち、列車を乗り継いだ。はじめての町中で懐かしい影が視界を横切り、胸が鳴った。
ふしめ。私はよんだ。
「またいでもいい?」
ふりむいた彼女は、綺麗に笑って淑やかに地に伏した。
右足から大きく前へ。
それだけの動作に軋むようになった膝に笑う。
けれど、ここからだ。
背中のむこうの石床に降り立ち、私は顔を上げた。
ファンタジー
公開:19/12/29 15:08
節目

rantan

読んでくださる方の心の隅に
すこしでも灯れたら幸せです。
よろしくお願いいたします(*´ー`*)

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