命の節目

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 真夜中。私は、ほぼ動かなくなった右足をそっとさすった。

 思えば、これまで色々なことがあった。

 初めて一等賞を取った徒競走。
 転校する友だちのバスを追いかけた夏。
 デートに遅れ、息を切らしながら駆け上がった坂道。
 骨折して松葉杖の私に無言で席を譲ってくれたおとなしい少女。

 すべてが温もりある思い出に変わっていく。

 今日、私は完全に機械の体になる。

 最後まで頑張ってくれた右足には、ただただ感謝しかない。
 私の人生を助け、よく動いてくれた。どの部位よりも愛していた。

 さあ、新しい体へと変わる節目だ。

 たっぷり油をさして、メンテナンスして、愛していこう。
 今度は、気が遠くなるくらいの時間をかけて。
SF
公開:19/12/29 14:54
更新:19/12/29 17:57
節目 コンテスト

二森ちる( 瞑想と妄想の森で )

二森(ふたもり)ちると申します。
人生の節目に、二つ目の名前をつくりました。童話や小説などはこの名で執筆しています。
怪談やホラー系は「鬼頭(きとう)ちる」名義で活動しています。
どうぞよろしく。

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