電信柱もこわいわけ

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 僕は電信柱もこわい。とくに木のやつがこわい。
 小学校のグランドのタイヤ跳びのところに、卒業記念のトーテムポールがたくさん立っている。卒業する時、クラス内で相手を決めてお互いの顔を彫るからだ。35個くらいのいろんな顔が僕の身長より高いところまで、ずらりと縦に並んでいる。ペンキがはげていたり、鼻が欠けていたり、木が腐って茸が生えていたりするものもあって、笑っているのか、怒っているのか、泣いているのか、なかには、こんな顔のニンゲンはいないんじゃないか、というくらい妖怪に似ているものもたくさんあって、友達はそういう顔のひとつひとつにあだ名をつけたりして、ボールをぶつけたり、蹴ったり、よじのぼったりして遊んでいる。
 そういうたくさんのトーテムポールの中には、何も彫られていない「木」のままの場所が残っているものが何本かあって、僕はその「何もない場所」がとてもこわい。
 だから電信柱もこわいんだ。
その他
公開:19/12/29 10:05
こわいわけ

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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