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 こんな夢を見た。
 僕はこの夏に亡くなった知人の冬を過ごしている。玄関の洗濯物を掻き分けていくと、縁側には木蓮の花がじくじくと腐っていて、プツプツと泡立っている。そのバケツの中で真っ赤なスッポンが裏返っており、伸ばした首が、まるで植物の蔓の巻き付くのを定点撮影したものを高速再生しているかのように捻じれていく。僕は噛まれないようにスッポンの柔らかな腹をそっと押した。だが、郵便受けに4枚目の不在票が投げ入れられた気配に気をとられてしまったため、右足の人差し指の一番長いところを、白い仔猫に思い切り噛みつかれてしまった。生乾きのTシャツを背中に浴びせかけられながら、僕は猫を宥め、スッポンに噛みついているクサガメを引っ張った。
「星が沈む」という声が聞こえたので、僕はこれまでのことは全部水に流し、バケツの中身を縁側のサッシから庭に投げ捨てようとすると宅配便のトラックの葬列が、縁の下まで続いていた。
ファンタジー
公開:19/12/29 07:21

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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