世渡り

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改元のあった日本が繁忙だというので、出張になった。現場には『不均衡』のアラートが鳴り続けている。
長いのも短いのも、この世を流れる『人生』で見渡す限り埋め尽くされている。一本手に取ってみると、ぎざぎざと歪に曲がっていて、これが一生の幸不幸を表す。総和があるから、正しくないバランスのやつは浮かべたとき傾く。全体との相性もある。これを直していくのが仕事だが、やたら難しい。
まあ、ライフイベントの年頃に合わせて山折り谷折りしとけばそれっぽくなるだろ、とさくさく片付けてたら側のベテランに睨まれた。
「あんた、忘れたのか?節目っていうのは、坂道を夢中で駆けているときにはわからない。あとから高低の大きさにはっとするんだよ。そんなきっちり折り目をつけられたんじゃあ、たまんないね」
何を言ってるんだ?しゃらくせえ。そう思ったが、そいつが折りあげた人生は、なんともいえないバランスで歴史の海にふわりと浮いた。
ファンタジー
公開:19/12/30 04:50
更新:19/12/30 17:07

つゆ

森絵都さんの『ショート・トリップ』が大好きです。

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