魔女のいる森

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この森には魔女がいる。

村に住む者なら一度は耳にする話だ。
漂う不吉さも相まってか、日が沈み出す頃には
恐怖の対象と化した森に近づく者は誰もいなくなる。

そんなある日、ひとりの男がおかしな事を言い出した。
月が綺麗なある夜のこと。
森の近くで少女の声を聞いた、と。
初めこそ皆ひどく驚いたものの、男が村でも有名な酒飲みであった為
きっと酔っぱらっていたのだろうと、すぐに相手にしなくなった。
一方の男も「はて、俺は酔っていたのか」と、このことを次第に忘れていった。

痩せて骨ばった手をひとりの愛らしい少女が見つめている。
不思議と恐怖は感じない。
握り返すその手が優しいからか。
孤独だった少女は月の綺麗な夜、歌うように話し続けた。

この少女にも魔女と呼ばれる日がやってくるのか。
森がざわめいている。
少女の運命を憂いてか、それとも・・・。

月夜は繰り返される。
ファンタジー
公開:19/12/30 04:23
更新:19/12/30 04:24

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