空(から)の鳥籠

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 祖母の家には、空の鳥籠がある。
 文鳥がいた鳥籠だ。
 文鳥は猫に半分食われた。私の母が、ズタズタになった文鳥を「気持ち悪い」と片付けた。私は怖くて離れていた。
 そんな私達を祖母は黙って見ていた。

「おや、帰っていたのかい?」
 母が仕事で遅くなる日、私は祖母の家に行く。
「うん。ただいま」
「今、おやつを出すから、ちょっと待っててね」
 祖母が洗面所で手を洗う音を聞きながら、私は涙が止まらなくなった。
「学校で嫌な事でもあったの?」
 戻ってきた祖母が私に聞く。
「違う」

 今日、学校で「この近辺で猫の惨殺が相次いでいる。不審者に気をつけるように」と話があった。

 帰宅した祖母は、私がその禍々しい臭いに気付いてないと思っているのだろうか。
 
 あの日、私は祖母に何を言えば良かったのか。今、どうすればいいのか。
 答えを見つけられない私は、ただ泣くことしかできなかった。
その他
公開:19/12/28 07:04
更新:19/12/28 12:13

堀真潮

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