学問にススメ

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「ワキチではない!」
和服姿の男の人が机の横に立っていた。
「諭という漢字も書けんのか。かよさんも浄土で嘆いていることだろう」
「おばあちゃんに会ったの?」
「孫に勉強を教えて欲しいと頼まれたのだよ」
「そう。でも不法侵入は良くないよ」
「出入り口はここしかないのだ」
男の人は懐から壱萬円札を取り出し、人物が描かれているはずの部分を指差した。この人どこかで……壱萬円札の人!
「『学問にススメ』を読んでみなさい」
壱萬円札の人は本を差し出した。
「『学問のすすめ』じゃないの?あなた偽札?」
「失敬な。これは最新版で女子高生向けに受験についての考え方を説いたものだ。読みなさい」
こうして壱萬円札の人、失礼、諭吉さんの猛特訓が始まった。

五年が経ち私は母校の教壇に立っている。
黒板に書かれた輪の文字の横に諭と書く。
女子高生たちの笑い声が鳴り響く。
私は「学問にススメ」のプリントを配り始めた。
その他
公開:19/12/27 18:49
節目

文月 楓

ゆるりと作品を創っていきたいと思います。
どの作品にでもコメントいただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたします。

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