影響力

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仕事の鬱憤がたまると、男は星を写しに山へ行く。美しい星は空いっぱいに溢れていた。三脚を立ててカメラを設置する頃、既に体は冷え切って耳はガンガンするほど痛い。
「寒くなきゃいいのに」

その瞬間、空に瞬く星たちが一斉に山の向こうに落ちた。目の前が真っ暗になると次はいきなり明るくなって、ほかほかの太陽が昇ってしまった。時刻はまだ深夜2時。
「は!?なんだよこれ、俺の話なんか聞かなくていいんだよ!」
男はハッとする。脳裏に今朝の出来事が浮かんだ。
「ん?なにこれ?」
「お言葉ですが…部長、あなたの指示です」
「こんな書類作れなんて言ってない」
「会社にいるときだけじゃなく、飲み会のときも何度も念押ししてたじゃないですか…」
「飲みの席なんだから軽く流せよ」
「…こういうこと多すぎます」
部下は退職願を静かに置いた。

それから男の目は星を映さない。ただ一つ、北極星だけはいつも男に輝いた。
その他
公開:19/12/26 13:00

みみ

むかし話、おとぎ話が小さい頃から大好きです。
誰かの目に留まるような物語が書けるように頑張ります!

コメントや☆をつけてくださる方、本当にありがとうございます。嬉しいなぁ、幸せだなぁと心から思いますm(_ _)m

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