首ったけ

すこぶる上等のべっぴんと付き合えるようになった。俺みたいなうだつの上がらねえ男がどうしてそんな好い女と？

そりゃあ、話せば長げえことになるが、おまいさん、釣りはするかい？

そっかそっか。なら話は早ええ。

月のねえ夜、大川の傍（はた）で夜釣りを楽しんでいたと思いねえ。真っ暗な中、釣り糸を垂らしながらふと観ると白いものがある。なんだと思いつつ近づいてみると、なんと髑髏（しゃれこうべ）だったとくらぁ。

別に怖かあなかったが、ちびちびやってたどぶろくをかけて供養の真似事なんざしてやったって寸法よ。釣りも興ざめしたんで家に戻ってそのまま寝ちまった。

したらな、翌晩、女の声で尋ねてくるものがありやがる。そんなやつぁ知り合いにいねえから不思議に思っていると、それが「昨晩のお礼にうかがいました」とくらぁ。

それがこいつよ。

なに、ちょっと首が伸びる欠点はあるんだがな。それも含めて首ったけよ。