バス
5
9
一人バスに乗っている。
霧とも闇ともつかぬ中を走るバスに、他の客はいない。
あの世へ向かっているのだなと思った。
十分長く生きたし、悔いはない。
退屈しのぎに私は運転手に話しかけてみた。
「バスができる前は何を使って行ってたんでしょう」
「それこそ馬車じゃないですか」
意外にも運転手は気さくに答えてくれた。
「時間が掛かったでしょうね」
「いや、昔の方が早かったくらいです。今はこういう事がありますからね」
そういえばバスはさっきから止まったままだ。
私は一番前に行って窓から外を見た。
金属の箱が幾つも積み重なって、道を塞いでいる。
「延命治療の機械ですよ。あれが退くまで前には進めません」
「どのくらいかかりますか?」
「さあ。数日か数年か」
「数年……」
このバスの中に、数年間閉じ込められる?
絶望する私に「ここはまだ地獄じゃありませんよ」と運転手は笑った。
霧とも闇ともつかぬ中を走るバスに、他の客はいない。
あの世へ向かっているのだなと思った。
十分長く生きたし、悔いはない。
退屈しのぎに私は運転手に話しかけてみた。
「バスができる前は何を使って行ってたんでしょう」
「それこそ馬車じゃないですか」
意外にも運転手は気さくに答えてくれた。
「時間が掛かったでしょうね」
「いや、昔の方が早かったくらいです。今はこういう事がありますからね」
そういえばバスはさっきから止まったままだ。
私は一番前に行って窓から外を見た。
金属の箱が幾つも積み重なって、道を塞いでいる。
「延命治療の機械ですよ。あれが退くまで前には進めません」
「どのくらいかかりますか?」
「さあ。数日か数年か」
「数年……」
このバスの中に、数年間閉じ込められる?
絶望する私に「ここはまだ地獄じゃありませんよ」と運転手は笑った。
その他
公開:19/12/27 07:12
朗読依頼等は、お手数ですがこちらまでご連絡ください。
Twitter @hori_mashio
tamanegitarou1539@gmail.com
ログインするとコメントを投稿できます