節目の向こう
8
10
ぼんやりした視界が、徐々にクリアになる。
桜の舞う校庭。僕は初めてのスーツに身を包み、走り回っている。
相手のバットが空を切る。「優勝だ!」チームメートが駆け寄る。
夕陽の見える丘。初恋。彼女の手にぎこちなく触れる。
大学の合格発表。番号はない。落ち込んだ帰り道、歩道に突っ込んだ車が僕を……。
「懐かしかった?」
頭の中に声が響く。これが走馬灯ってヤツか。それにしても……。
「死神って、女性もいるんですね」
そう言った僕の目の前に、ゆらゆらと人影が現れる。
「母さん!なんで?」
「失礼ね、死神なんて。一緒に振り返りたかったのよ。あなたは……生きなさい」
眩い光。目を開けていられない。
全てを聞かされたのは退院してからだった。一緒に発表を見に行った母さんが、僕を庇ってくれたことも。
「いってくるよ」
仏壇に手を合わせ、僕は立ち上がる。
あれから一年。今日は、合格発表の日。
桜の舞う校庭。僕は初めてのスーツに身を包み、走り回っている。
相手のバットが空を切る。「優勝だ!」チームメートが駆け寄る。
夕陽の見える丘。初恋。彼女の手にぎこちなく触れる。
大学の合格発表。番号はない。落ち込んだ帰り道、歩道に突っ込んだ車が僕を……。
「懐かしかった?」
頭の中に声が響く。これが走馬灯ってヤツか。それにしても……。
「死神って、女性もいるんですね」
そう言った僕の目の前に、ゆらゆらと人影が現れる。
「母さん!なんで?」
「失礼ね、死神なんて。一緒に振り返りたかったのよ。あなたは……生きなさい」
眩い光。目を開けていられない。
全てを聞かされたのは退院してからだった。一緒に発表を見に行った母さんが、僕を庇ってくれたことも。
「いってくるよ」
仏壇に手を合わせ、僕は立ち上がる。
あれから一年。今日は、合格発表の日。
ファンタジー
公開:19/12/27 02:30
更新:19/12/27 02:44
更新:19/12/27 02:44
節目
30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。
長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。
Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00
株式会社ベルモニー Presents ショートショートコンテスト 入選 「とんでかえる」
隕石家族×ショートショートガーデンコラボ 小惑星賞 「詠み人家族」
ログインするとコメントを投稿できます